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朝原 宣治氏 朝原 宣治氏(大阪ガス(株)人事部・北京オリンピック銅メダリスト)
「アスリートの食」

1972年生まれ。神戸市出身。同志社大学時代の1993年、国体で100メートル10秒19の日本新記録をマーク。大学卒業後、大阪ガス(株)に入社、100メートルでは日本人として初めての10秒0台をマークし、日本記録を3回更新。陸上短距離界の第一人者として活躍。自己最高記録は日本歴代2位の100メートル10秒02。 1996年アトランタオリンピックから4回連続五輪出場。2008年北京五輪の男子4×100メートルリレーで銅メダルを獲得。同年9月に陸上現役選手を引退。

トップアスリートにとって「食」とは?

講演風景写真

 選手によって食に対する意識はさまざまです。チームによって栄養士がついていたり、組織でやっている選手は、食についても、ものすごくこだわりはあります。特に、長距離の選手にそういう傾向は見られますよね。海外に遠征に行っても、現地で日本のお米を食べないと力が出ないからと、日本からお米と炊飯器を持っていく人もいる。「おにぎりが一番パワーが出る」という選手もいれば、逆に全く無頓着な選手もいます。でも、無頓着過ぎてもトップアスリートにはなれないので、僕はその中間くらいですね。
 練習後の栄養補給も大事です。コンディションづくりに栄養は大切なので、一通りの知識はあります。ただ、「毎日、蛋白質を何ミリグラム、カロリーを計算して1日何キロカロリーとらないといけない」というところまではやっていなくて、自分でチョイスして直感でやるのが僕のスタイルでした。常に「バランス」が頭にあるので、食べたい中でも、「これはやめておいて、こっちの方がいいかもしれない」と選んでいました。例えば、オリンピックの直前などは、選手村で食事を選ぶ時に栄養のことばかり考えてられないのですね。気持ちを落ちつかせないといけないし、ほしいものを食べないと、ストレスを感じちゃって走りがよくならない。それを食べて気持ちがすっきりするなら、食べます。その辺りはバランスよく、食事とはつきあっていました。

選手時代に食事で気をつけていたことは?

 選手の時は練習後、いかに体を回復させたり、壊れた筋肉を元に戻すかということを意識して食事をとっていました。僕の場合は蛋白質に気をつけて、練習後、素早くとるようにしていましたね。瞬発系の筋肉や破壊された筋肉には動物性の方がいいと聞いていましたので、極力、練習が終わった後には動物性蛋白質をとったり、サプリメントで補強していました。
 選手は結果を出さないといけないので、決められた時間に決められたものを食べるというよりは、練習の強度に合わせてとっていたというのが大きいです。朝ご飯は食べますが、練習が長引いたりすると、昼ご飯を食べるのが午後2〜3時にずれることもあります。その後にもう一度練習する場合はお昼ご飯を多く食べてしまうと、おなががゴロゴロして動けないことがあるので、サッサッと栄養価の高そうなものを選びつつも、ちょっと量を少なめにして摂る。その分、夜にご飯をしっかり食べるというふうに、トータルで考えて適時、適所で食べられるものを摂っていました。試合の前になると、また食事は違ってきて、朝ご飯は普通ですが、日本選手権のような試合になると、予選、準決勝、決勝があって、その間、食事は困るのですね。おにぎりなどを食べて、その時にあまり重いもの、から揚げやトンカツなど揚げ物を食べると次の走りに支障を来すので、ゼリー状のサプリメントを摂るなど、そういう工夫はしていました。

朝原家の食卓は?

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 子ども時代、今振り返ると結構品数が多かった、小鉢が多かったなと思います。妻が弁当をつくっているのを見ていると、毎日つくっていたら大変じゃないですか。それを母親がつくってくれていたと思うとね、今、感謝の気持ちで一杯です。お弁当にしても、バランスよく野菜と肉と揃っていたなと。子どもにも、バランスよく食べてほしいのですが、食べさそうとすればするほど、全然食べなくて、何か工夫をしないといけないかなと思っています。僕も子どもの頃は、好き嫌いが結構ありました。トマトもダメでしたし、キューリのにおいをかぐと鈴虫を思い出して食べられなかったり(笑)。後は、今でもカキが食べられない。2枚貝はあまり好きじゃないです。好きなものは魚。焼き魚より、煮魚の方が好きですね。ホウレンソウのおひたしなども好きです。特に選手時代の後半からは野菜を摂ってコンディショニングを整える方が、回復力がアップしたりというのは、気のせいかもしれないですけど、感じました。外食で肉を食べるなら別にサラダを頼むとか、温野菜を頼むとかはやっていましたね。
 最後の晩餐に何を食べたいかというと、本当はお寿司の中トロが食べたいです。でも死ぬ前にそんな濃いものを食べられるのかなと思ったので、お茶漬けやご飯がいいかもしれないですね。
 一人暮らしが結構長かったので、料理は一通りできます。野菜炒めなども、冷蔵庫にある色々な色の野菜を混ぜるようにして、味付けも自分なりに工夫して、ちょっと甘めにしたりしながら、子どもの分もつくったりしています。上の子どもは料理が大好きで、妻と一緒に台所に並んで野菜を切ったりしていますよ。

これからの抱負は?

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 選手としては自分の夢を叶えたわけですけれど、これまでの経験を活かして子どもたちやさまざまな方々に、楽しさや喜びを与えられるようなことができたらと思っています。それから、陸上競技もスポーツ全般もそうだと思いますが、バランスということが本当に大切で、僕は何に優れているかというと、そんなに突出して肉体的に、この筋肉がものすごく強いから強かったんだというのはないのです。計測をすると僕より強い選手は結構いるのです。それを考えていくと、精神的なことだったり、栄養のことだったり、バランスをうまく自分で整えていって、結果が出るように導いていったのですね。
 生活の中で自分がよりよく生きていくために、ここだけ突出して磨いていこうというのではなく、バランスよく考えて進んでいくというのは、食事にしても、運動にしても、大切ではないかと思います。