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一条 ゆかり氏 一条 ゆかり氏 漫画家
「食体験が育む“こころ”〜イヤシさは身を助ける!?〜」

1949年9月19日岡山県玉野市生まれ。高校1年生で単行本デビュー。1967年第1回りぼん新人漫画賞で準入選。第10回講談社漫画賞少女部門、第11回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞など様々な賞を受賞。代表作に、「デザイナー」、「砂の城」、「有閑倶楽部」、「プライド」、エッセイ漫画の「一条ゆかりの食生活」など。

一番末っ子の私が母とともに家事担当だった少女時代。そのおかげで料理上手に

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 私は、岡山県の海沿いの街で生まれ育ちました。6人兄弟の末っ子でしたが、母が働いていたので、家事は私が結構担当していました。男兄弟が3人いるのですが、昔気質の母は「男子厨房に入らず」で誰も手伝わせないんです。 姉が2人いましたが、姉は帰ってくるのが遅いので結果的に私がこき使われる羽目になりまして。七輪の中にコークスという安い石炭みたいなものをいれて火を起こしていたので、火起こしは今でも得意ですよ。薪で火を起こすのですが、「はじめチョロチョロ、中パッパ」と母にいわれていました。「赤子泣いても蓋とるな」と母親にうるさくいわれましたが、興味に勝てずこっそり何度も蓋をとってみました。味は全然変わりませんでしたけどねえ。釜で炊くごはんはおいしいです。食べ盛りの男子が3人と父親とあわせて家族が8人いたものですから、毎日一升炊いていましたが全部なくなっていました。
 19歳の時から東京で一人暮らしを始めましたが、そのおかげで料理には何ひとつ困りませんでした。東京生活二日目には包丁と砥石を買って、初めて魚をさばきました。母が毎日さばいていたのを見ていたので、確かこうだったよなと思い出しながらやってみたら楽勝で、魚さばくのって簡単じゃん、と思いました。

生きている魚を見たことがない“メシスタント”に、料理で苦言を呈する

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 アシスタントに20代の方を雇うと、魚の切り身しか見たことがないせいか全体図を知らないという人が多いんです。そのせいで、基本的に魚の食べ方がよくないんですよ。あばらのところにちょっと内臓がくっついてると、全部残します。もったいないじゃないですか。それで怒って「きれいに食べなさい。お魚の顔がついている頬と目の回りの肉は必ず食べなさい」と言いますと、「そんなところ食べられるの?」とビックリされます。私は、料理担当の“メシスタント”をアシスタントに頼んでいたのですが、どの子も料理がほとんどできない。室田先生もおっしゃっておられましたが、家で料理を全く教えられていない人がすごくたくさんいるんだなと思いました。でも、食べることが好きでないと、作ることに興味を持てないので上達しませんね。
 私の子どもの頃は、誰もが貧乏でお腹を空かせていましたね。岡山の海のそばだったので、魚屋の魚はさっきまで生きているのが当たり前の環境でした。お魚を煮て食べ終わると小骨をすべて集めて熱湯を上からかけて蓋をします。2、3分待っていると骨から出汁がたくさん出て、それがすごくおいしいんですよ。必ずそうしておつゆもちゃんと飲んでいました。

美味しく食べる創意工夫で野菜嫌いを克服。今では、家庭菜園に精を出す日々

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 私は食べることは大好きですが、ほとんどの野菜が食べられなかったんです。でも、家族がたくさんいると親は私の好き嫌いに付き合ってくれません。野菜の中でトマトだけ食べることができたのは、「赤くて丸いものは果物だ」と母がだましてくれたおかげです。フルーツトマトは糖度も高いし果物の方に入れてもよいくらいなので、今ならトマトは果物でもOKですけどね。好き嫌いがあっても、どうすればおいしく食べれるか、食べるための創意工夫や研究を未だにしています。
 私は今一人暮らしですが、ネギが嫌いなので普段は買いません。昔、ベルサイユ宮殿の夕食会に参加したときに、ポロネギという西洋ネギのクラタンを口から思わず出したこともあるほどです。でも家に人が訪問してくる時におだしする料理にネギがないとまずいと思い、大阪のおばさんがしていたコップの中にネギを入れる方法で、ネギ栽培をしていました。そうこうするうちに庭に植えるとドンドン広がってきて、今では家庭菜園で、キュウリ、トマト、レタス、サヤインゲン、ホウレンソウなどつくれるものは結構つくっています。家庭菜園は、成長する過程が面白い。気がついたら、いつの間にか苦手な野菜が食べられるようになりました。
 例えば、キュウリは3年前までは食べられませんでした。でも自分でキュウリをつくって、モロキュー用の味噌を仕込んで姫キュウリを食べると、とてもおいしくて。自慢したくなって友だちとキュウリパーティとか野菜パーティなどを開いているうちに、ドンドン食べられるものが増えていきました。

食に関する知識を追究した結果、結局は日本人本来の食生活が一番と納得

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 自炊の時は、朝昼ガッチリで夕飯少なめです。朝昼までは炭水化物も食べてよし。夕食のお誘いがイタリアンの時にはパスタは外せないので、「イタリアンはできるだけ昼にしてください」と言っています。営業用の勝負服はボディコンが多いのですが、そういう服は結構高いし元来ケチなので、できるだけサイズを変えないようにして気をつけています。本当はもう2、3キロ締めたいのですが、そこまでするのが辛くて現状維持となっています。でも去年、2、3キロ体重を減らしたときに、うっかりワンピースを買っちゃったんです。そのワンピースを着られるように、去年の体重に戻したいと思っています。せっかくのワンピースがもったいないですから。
 私は食べることが好きで、お酒も好きで、甘いものも好き。当然太るので、ダイエットしないといけません。人生一生ダイエットで大変ですが、ものすごく知識が増えて、どのようにすればいいかということが分かってきました。いろいろ研究した結果、少し前の日本人の正しい食生活を心がけ、季節のものを食べて腹八分にして、夜は寝る前には食べずに、バランスよくいろいろと食べる。結局は、元のところに戻ったわけです。でも、まずいものを食べて太るのだけは、絶対いやですね。

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