京都府出身。同志社大学大学院修了。1992年バルセロナ五輪シンクロナイズドスイミング銅メダリスト。2000年より2002年12月までシルクドソレイユに所属。ラスベガスで最高峰の「O(オー)」に出演を果たす。02年、陸上短距離の朝原宣治選手(大阪ガス所属)と結婚。現在は二児の母。 |
テレビ番組の生放送があって朝5時前に起きたので、家にあるものを持って出て、車の中で食べました。バナナ、トマトジュース、キャロットジュース、大きめの鶏そぼろのおにぎり1個。それだけです。鶏そぼろが好きなので、時間のあるときに1kgぐらい作って、冷凍しています。普段はお味噌汁など、もう少し色々なメニューを作っていますよ。
今6歳の娘がテレビの料理番組を毎日見ていて、料理好きです。朝は毎日スクランブルドエッグを作ってくれて、キュウリやプチトマトを添えたり、ベーコンをカリカリに焼いてくれたりもします。それもあって、朝ごはんは毎日しっかり食べさせています。朝ごはんをちゃんと食べることが大切だと思っています。
トップアスリートは、どんな状況でも戦える精神力と順応性が必要です。食事に対しても、炭水化物やタンパク質、ビタミンなど、今自分が必要な栄養素を頭に入れておいて、料理を見た瞬間にたくさん食べるか、食べ過ぎないようにするかの判断がつかないようだと、本当に強い選手にはなれないのではないでしょうか。
子どもの頃はトップスイマーになろうという意識はなかったのですが、母からは「食事は頭で食べなさい。好き嫌いだけでなく、食べ物がエネルギーになることをちゃんと考えて食事しなさい」と言われて育ちました。シンクロが上達し、食事の量と質そしてタイミングを自分の頭で考え始めたとき、初めて母の言っていたことが分かったのです。
シンクロは身体に浮力を付けることが求められるため、ある程度の脂肪が必要ですが、付けすぎるとぜい肉になって動きが鈍くなるので、調整が大変です。そこで、中学3年生の頃から食事のメニューを記録し、栄養士の先生と母と私の三人で定期的に面談をしてメニューや調理法のアドバイスを受けていました。また、食品栄養成分表を持ち歩くなど、食事には人一倍気を配りました。
大事な試合の前には何を食べるかという質問をよく受けますが、自分の気持ちが盛り上がるようなものを食べるのが一番です。私の場合は海外でもご飯を炊いて、母が作ってくれたチリメン山椒で握ったおにぎりでした。当時、コーチだった井村雅代先生が握ってくれたこともあって、ありがたかったですね。それから、お餅ときな粉を持って行き、安倍川餅にしたり、しょう油を付けて海苔で巻いたりもしていました。
バルセロナ五輪では、14歳ながら競泳で金メダルをとった岩崎恭子選手とも一緒でしたが、彼女も決勝戦の前におにぎりを食べていましたね。あと、試合前には、世界のどこでも手に入りやすいバナナもお勧めです。
米国にいるときは、糠で漬物を漬けたり、ひじきや切り干し大根で煮物を作ったり、3パック500円以上する納豆を食べるなど、色々と工夫しました。ルームメイトが外国人でしたが、納豆と梅干しはダメでしたね。あと、お好み焼きの上にかけた鰹節が動いているのを見て、「生きている」と驚いていたのが面白かったです。他にも、ちりめんじゃこを見て、「魚の目があるから、食べられない」とか、食文化の違いを感じさせられました。
そんな生活の中で、和食というのは素晴らしい食文化だと思いました。納豆や漬物、しょう油、味噌など、発酵食品がたくさんありますよね。海外にもチーズなどがありますが、一度に食べる量が多く、私たちが同じように食べているとメタボになるのではないでしょうか。
夫の朝原宣治は、5年間一人でドイツに住んでいましたが、ご飯を食べずに、主にパンとソーセージ、ジャガイモ、ザワークラウトと言うキャベツの酢の物を食べて過ごしたそうです。これと思ったことはブレずに諦めないでやる人ですが、一方で柔軟性もあって、自分のこだわる部分はこだわりつつ、それ以外のことは割とどうでも良いというところもありますね。
私が疲れているときなどにお願いすると、夫が料理を作ってくれます。アスリートとして一人暮らしが長かったこともあって、味も栄養バランスも悪くないのですが、一つのお皿に作った料理を山盛りにするので、器の選び方や盛り付けをもっと探求してほしいですね(笑)。休みの日は、子どもも一緒になって餃子を作ったりもします。
本人は「何でも食べる」と言っているものの、夫はナスビが苦手です。それから、夜は食べるんですが、朝のトマトもダメですね。上の子どもは、和食があまり好きではなく、下の子どもはホタルイカや塩辛なども食べるという感じで、二人の子どもの食べ物の好みは全然違います。
子どもの頃、私も好き嫌いが多く、肉は脂身のない赤身、鶏肉は筋のないササミしか食べられませんでした。でも、シンクロの選手として強くなるには何を食べれば良いのかと考えたときから何でも食べるようになったのです。そんなふうに自覚ができれば良いと思うので、今は楽しく食べて、食べることが好きになってほしいですね。
子どもの時からキチンとした食生活を送ることはもちろん大切ですが、温かい空間の中で家族や好きな人たちと一緒に食べることが一番大事だと思っています。今、子どもが一人で食事をする「個食」が問題になっていますが、みんなで楽しく食べるという空間作りが大切なのではないでしょうか。皆さんもそれぞれのご家庭や学校などで、楽しい食の空間作りを心掛けていただけたらと思います。