長野県出身。昭和女子大学大学院生活機構研究科修士課程修了。 |
1軍の本拠地は北海道札幌市にございますが、2軍は千葉県鎌ヶ谷市にあります。私は、茨城県つくば市の中央研究所に勤務し、これからファイターズがずっと強くあり続けるために2軍の若手の選手たちの食事面でのサポートを行なっています。
日本ハムでは「食べることを楽しもう」をスローガンにして食育を推進しています。さまざまなことを食育活動として行っていますが、一つは「体験型」。私どもは「五感」、見る、聞く、嗅ぐ、触れる、味わう、の五感を通じた食育活動を展開しています。「体験型」でいくと、料理教室の開催です。「知識型」としては学校への食育授業の参画です。「知識型」は、楽しく学習するのか一つのキーワードになっています。
「知識」「体験」をあわせもった活動の一つとして、食物アレルギーを持ったお子さまの保護者とお子さまを対象にした料理教室とセミナーも行っています。また、食文化の継承で、おばあさん世代からお母さん世代へ、食だけにとらわれず、子育ての工夫、お嫁さんからの悩みに対しておばあさんが応えてくれる機会の提供も実施しています。ファイターズでは食文化の継承として、普通の方が実施している方法、一汁三菜の並べ方など、子どもに教えるようなこともマナーとして行っています。ファイターズでは、こうした普通のことが普通にできる選手を育て、なおかつ、球界の上昇チームになることを球団のスローガンに掲げてチームの強化を行なっています。
実はスポーツをすると健康だと思うのは一般の人のスポーツレベルです。身体を動かせば動かすほど身体はぼろぼろになっていきます。その激しいトレーニングから、いかに速やかに回復するか。いかに速やかに次の日の試合、練習に備えていくのか。そうしたことに必要な、トレーニング効果を高めるのにも栄養サポートは役立ちます。ファイターズの1軍の勝利に貢献している選手というのは、食事がきちんとしています。運動能力を、最大限に発揮するために選手自身が栄養摂取の方法を身につけること、栄養の情報や指導を受けることがいかに大切だということがおわかりいただけるかと思います。
私たちが行なっている栄養サポートでは、選手が自分で自分の食事を管理できる選手を育てようということをスローガンに、自分で食事を選べる選手の育成を行なっています。他には、選手の尿や便の状態をチェックしたり、選手のお腹をつまんで体脂肪率の計量を行なうなどして、選手の健康維持を行なっています。皆さんは、体脂肪を測る時にダルビッシュのお腹をつまめて羨ましいとおっしゃいますが、測るのに忙しくて、ダルビッシュの顔なんか見ることないんですよ(笑)
その他にサポートする内容としては、栄養情報の提供です。オフといっても選手は寮で過ごす時間もあるので、食堂に情報を提供したり、新婚さんには、レシピを提供したりします。春のキャンプ時に、どんな取り組みをしたのか、どこが頑張れた、頑張れなかったのかを聞いて、キャンプの最後にまとめのカウンセリングをしています。自分の中で改善していくという取り組みを選手自身で繰り返し行ってもらうことで、自分で食事を選ぶ力のある選手を育てることにつながっていると思います。
食育セミナーとしては、このような選手に行っているサポートを選手だけに止めておくのはもったいないので、野球をしているお子さんなどにスポーツの栄養セミナーを野球教室とセットで指導したりしています。また、キッズサマーキャンプといって、ファイターズでは宿泊型のキャンプも実施しています。キャンプが終わった後に、お母さん方からアンケートを回収すると、「選手が食べていると聞いて、朝ご飯を食べなかった子どもがセミナーから帰ってからよく朝ご飯を食べるようになりました」「食器の片付けとか手伝ってくれるようになりました」との声がありました。このように、ファイターズでサポートを行っていることも、どんどん外に発信して、食事を大切にする選手が育ってくれれば、と思っています。
IOCでは、「食べ物は豊かな生活だけでなく、スポーツで成功することにも貢献する」と、スポーツ栄養の合同声明で語っています。スポーツで成功することに貢献することも、もちろん大切ですが、その前提として食べ物は豊かな生活をつくる基本です。健康になるためには、また、スポーツで強くなるためには、これこれの食生活をしなければいけないと、あまり深く考えないようにしてください。今日の食事を楽しむところから、食育を実践いただければと思います。