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講師 清久 利和 氏

学習指導要領の改訂をふまえた
これからの食育のすすめ方

文部科学省
初等中等教育局 健康教育・食育課 食育調査官

清久 利和 きよく としかず 氏

文部科学省では、改訂した学習指導要領を踏まえるとともに、子どもの食を取り巻く状況の変化に対応するために「食に関する指導の手引」を改訂されました。手引には「食」を通して、子どもたちにどのような資質・能力が必要なのかが記載されており、学校での食育推進において大変役立つ内容です。その手引作成の背景や思いなどについてご紹介いただきます。

「食は大切」「食は楽しい」気持ちが自己管理能力を伸ばす

講演Ⅰ

  私は、もともと兵庫県で教師をしておりまして、県の教育委員会、市の教育委員会を経て文部科学省に入省しました。現在は、東京で単身赴任中です。炊飯器で毎日ご飯を炊き、味噌汁とご飯ともう一品をつくる生活を2年間続けています。
  お味噌汁は、ダシをとって10種類以上の野菜や海草、茸、豆腐類を入れて食べています。最初は義務的に調理していましたが、最近は楽しいのです。しかも美味しい。そこで、気が付きました。「食の自己管理能力」は、「食は大切だよ」ということ、そして、「食は楽しいよ」ということです。この2点が理解できたら、自己管理能力が生まれるんじゃないかと思うようになってきました。子どもたちには、このことを伝えたいと思います。
  こうした考えは、小学校就学前から子どもたちに教えて伝えていただくことが大事です。そうすることで将来、子どもたちが自立した時、「食の自己管理能力」を発揮できる子どもたちになっていてほしいと願っています。それを踏まえて、本日は、「学校における食育の推進」、「学習指導要領の改訂」、文部科学省で発行している「食に関する指導の手引」の内容についてお話してまいりたいと思います。

食を通じて子どもたちに「自己肯定感」を育てる活動を推進

講演Ⅰ

  「学校における食育の推進」についてですが、文部科学省で全国にモデル校を10カ所程度指定し、食育を行っています。その中では、保護者と子どもたち両方に対し実施しています。その効果ですが、まず、子どもとたちと保護者の家での食に関する会話が増えます。そのことで、家庭と学校がつながることができます。具体的には、「総合的な学習の時間」の中で、地域の生産者や食にかかわる人々と子どもが交流する場をたくさん持ってもらい、学年に応じて発達段階に応じてさまざまな体験活動を絡めていきます。
  小学生や高校生など間が離れた校種が連携することによって、子どもたちが「自己肯定感」を持つという効果が生まれました。特に、高校生になるにつれて「自己肯定感」はどんどんなくなる傾向がありますが、小学生や幼稚園の生徒と交わり教えることで不登校傾向だった高校生が登校するようになったケースもあるそうです。食を通じて、それほどの効果があるのです。
  島根県の例ですが、地元の農林水産部の方が講義をして実際に自分でアジを触る、あるいは、アジの食べ方をシートに書き込み、それを見ながら食べるなど、給食の時間を中心に地元でとれるアジの学習をさまざまな方法を用いて取り組んでいます。栄養教諭が給食のレシピを地元のスーパーに提供することで、そのスーパーは潤います。まさにWin-Winの関係が築かれています。子どもたちは、こうした体験的な授業に加えて、食の自己管理能力を高めるためのチェックシートを作成し食習慣や生活習慣を確認していきます。さらには、家庭に呼びかけて「食育チャレンジデー」を開設し、家庭でも食育を考えていただく取り組みを行っておられます。
  その結果、「朝ご飯を食べることが大切だ」という子どもが増えているのです。食に対する意識が、さらに高まった子どもたちは行動が変わっていくこともわかってきたのです。

「食」がこれからの社会を「生きる力」を身につける原動力に

講演Ⅰ

  次に、「学習指導要領改訂」についてお話します。学習指導要領の改訂は平成29年と30年に行われました。情報化やグローバル化、AIの登場があるのではないかといった、次の時代がどうなるかが掲載されています。今後の変化が読めない時代のことを、政府は「Society5.0」と呼んでいますが、政府広報ではその予想される社会をイメージビデオにしています。
  つぎの社会は、AIが活躍する時代と考えられています。今日本でも、ドローンを使った山間部や離島に対する宅配サービスの実証実験が行われたり、すごい時代が到来しつつあります。そんな時代を、子どもたちが生き抜くためにはどうすればよいのか。新しい学習指導要領では、人間しかできない「理解力」「人間らしい判断力」「読解力」「常識」「発想力」、こうした事柄を伸ばしていきましょうとうたっています。そのためには、「思考」「表現」「判断」をさせる必要がありますが、今回は、3つの柱で「資質・能力」が整理されました。改訂のポイントは3つあります。ひとつは、3つの柱に基づいて再整理したものです。2点目は、「主体的・対話的な深い学び」。これを食育の中で行っていきます。3点目は、「カリキュラムマネジメントの重視」です。食に関する全体計画を改善していくということを行い、学校でカリキュラムマネジメントを実施していただきたいと考えています。
  このように、今回のセミナーのテーマでもある「生きる力」、それを育むためにどのような力を身につければよいのか。未来に活躍できる子どもたちを、「食」を通して育成していきたいというのが文部科学省の考えなのです。

6つの視点から食育授業を行うなど望ましい食習慣を啓発

講演Ⅰ

  文部科学省は、「学習指導要領」改訂を受けて、昨年3月に「食に関する指導の手引」を改訂しました。「食に関する指導の手引」作成の主旨は、大きく分けて3点あります。1.食生活に対する正しい知識を子どもたちに身につけていきたい。2.食に関する自己管理能力を育成していきたい。3.それらを育成することによって正しい食習慣の形成ができる子どもたちを育てていきたい。以上を目的として作成し、各学校で目標を掲げてほしいとの要請を行っています。
  学校には、こうした点を踏まえて、必ず「食育の視点」「食文化や健全な食の生活」「食の選択」「自ら管理し判断できる力」「感謝する心」「食事のマナーを身につける」の6つの視点で食育授業を行うよう教育現場にお願いしています。どの授業で行うかということも、保健体育や家庭科などの授業に限定せず、学校教育全体で行っていただくのです。新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」が求められているため、例えば、外国語の授業に自分の食生活を英語で紹介しようとするといった要素を入れると、それで食育になります。大切なのは、「食の視点」を授業の中で位置づけて実施することなのです。
  給食については、食べ方や配膳の仕方について指導する「給食指導」と、「今日の食材はどこからきているか」「この食材をつくった人はどういう思いでいるのか」といったことを行い、食育を実施していきます。こうした取り組みを通して、望ましい食習慣を子どもたちに教えていきたいと考えています。

当日の講演資料はこちら(PDF)

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