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講師 清久 利和 氏講師 藤本 勇二 氏

生きる力を育む これからの食育

清久 利和 氏 × 藤本 勇二 氏

教育現場で心の余裕を持って対応すると食育効果が上がる

対談

藤本 現在、幼稚園などでは、さまざまな試みがなされ、すでに子どもたちが食育にふれあう機会がつくられています。ただ、上級学年になるほど無味乾燥なものになる傾向があります。季節感も何もなくなるのです。その中で子どもたちは「食」を学んでいきます。先生方は食に対する興味を持ってもらうために大変な努力をされています。
清久 これは難しい問題ですね。自分の反省点ですが、子どもたちは、こちらが思っているように動いてくれません。それに反応して、教える側は心を乱しがちです。そうならないようにすることも大事だと思います。子どもは、先生がイライラすることを見ているんですよね。そうすると、余計、食べなくなります。自分の心を乱さずに第三者の目で振り返り、気持ちの余裕を持ち続けながも諦めないことが大事だと思います。難しいですが。
藤本 今の清久さんの話で思い出しました。私が初任の時、校長に言われた言葉です。「学校の先生は暇そうにニコニコしておきなさい」と。これはかなり当たっているなと思いますよね。子どもにとっても私たちにとっても、精神衛生上、大事なことじゃないでしょうか。子どもたちは、先生に心の余裕を感じて「先生、ちょっと…」と関係性を持とうとします。それも、「食育」には重要なことではないかなと思っています。

何事も「自分事」にすることで本気で食に向き合えるように

対談

清久 今回、新しく「学習指導要領」が変わりましたよね。子どもたちが、どういった力を身につけていかないといけないかを打ち出しています。「主体的・対話的で深い学び」を通じて、子どもたちが自らの力で主体的に歩んでいくことを身につける必要があるとうたっています。「食を通して」といったことが、一つのキーワードではないかと思っています。
藤本 若い先生たちがたくさん増えていますが、授業をしていく上で、「食」を教材に授業をすることは初任者研修の点でも大きな意味があると考えています。子どもたちが、なかなか授業に集中しない時、食べ物の話をしたら…。
清久 そうですよ。食いついてきますよね。他の教科は子どもに興味・関心をもたせるのに苦労しますが、食べ物が教材の場合は一瞬で興味を引きますよね。全国学習状況調査のテストや大学入試でも、国語でも数学でもない、キーワードが「食」の内容でデータを分析して解くという内容で実施しているものがありました。
藤本 まさに、「食」には、いろんなチャンスがあるのではないかなと思います。キーワードとしては「自分事」にすること。例えば、子どもたちが世界で何が起こっているのかに思いをはせるといったことで、食に関することを「自分事」にしてほしいと思っています。それが、文部科学省的に表現すると「学びに向かう力」ではないでしょうか。私は、授業で子どもたちに問いかける場をつくったり、子どもに仕掛けたりしながら、本来、子どもが持っている優秀な学び手としての資質を発揮できるようにすればよいと思っています。
清久 そうですね。「自分事」という言葉は大事。「本気」ということです。本気でやらないと自分を変えることはできないと思います。例えば、体重を3キロ減らすことを「自分事」として考えると、毎日少し食べる量を減らしたり、運動量を増やしたりしますよね。「まあ、ええか」という気持ちが出てくると、やめちゃいますよね。本気度が消えてしまいます。それと同じで、食に関することに対しても「自分事」にするのは、とても大事だと思います。

大人が食育に興味を持ち実行することで地域が活性化へ

対談

藤本 大人が食育に関心をも持つのは、自分の子どもができた時などの大きなターニングポイントが訪れたときだと思います。人は、一つの節目があって目標に向かって行動します。
藤本 皆さん、子どもが自分の生活を振り返って見つめ直すだけでなく、それに私たち大人も身を正しませんかということですね。例えば、徳島県上勝町で葉っぱを産業化するまちづくりがよい例です。おばあちゃんたちが葉を山から採ってきてパックに詰めて売っているのですが、これが新しい農業形態になり孫に車を買ってあげられるような状態になっています。
清久 すごいですね。
藤本 全国100選に選ばれている棚田があるのですが、人が来てくれるようになると、「子どもが来るから、ちょっと草刈っておこうか」「プランターで花を植えておこうか」と街の人が行動を起こすようになったのです。子どもの笑顔を見たいわけですよ。子どもが楽しんでくれることは、元気につながることだと思うので、全員がお互いWin-Winなのです。
清久 今のお話、素敵ですよね。町の人たちは自分のことより子どものことの方に一生懸命なのかもしれません。これも「自分事」と考えているからなんでしょう。

周囲と「つながる」ことを大切にして子どもの多様な幸せを実現

対談

藤本 基本法が制定されて以来、今まで頑張って食育を行ってきたことで、食育を大事だと思う人たちが確実に増えています。さらに続けていくことが大事でしょう。今後、大事なのは「学校が学校の外と連携すること」ではないかと思っています。
清久 学習指導要領に戻りますが、「開かれた教育課程」というのが新学習指導要領にはあります。今までの教育は学校の中だけで閉じられていましたが、一人の子どもを教えるのにどうすればよいか皆で考えていきましょうと述べています。そのためには「地域も協力する、家庭も協力する」というスタンスですね。
藤本 それには、「食育」が一番やりやすいと思っているんですよ。学校と地域が連携する意味では、「食」は大きな可能性をもっていると思うんですね。
清久 食の生産者の方々は、子どもたちに「おいしく食べてもらいたい」と思っています。子どもたちのためだったらハードルを下げてくれますよね。「子どもに話をしてくれますか?」というと、すぐに協力してくれるでしょう。
藤本 授業の中で「やる気スイッチ」さえ押してあげることができれば、子どもたちは授業以外のところでも学んでいきます。気をつけたいのは、自分の教室を同質に塗りつぶさないこと。どの集団にも強い個性を持った子どもたちがいますが、それぞれに何かしら役割が与えられているものです。そういった子どもたちがいると新しいことが学べます。周囲の多様な人たちと共同しながら、多様な子どもの幸せをどう実現していくのかを考える時代に来ています。
清久 食育を担任の先生一人でできないと考えるなら、「つながる」ということは一つのキーワードとなるでしょう。多様性を持っていろいろな方々とつながる。私も、そこを意識していきたいと思います。

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