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10歳若がえり隊隣のスーパーアスリート

曽我部 一行さん

「世界一のオッサンになる!」
小学校の人気教員

曽我部 一行さん
KAZUYUKI SOGABE

小学校教員への道

名古屋で小学校教員を務めておられる曽我部さんは、テコンドーの現役選手として活躍する41歳。「こう見えて、30歳まで東京育ちのシティボーイだったんですよ(笑)」とお茶目な笑顔を見せながら、気さくにインタビューがはじまった。
実は両親ともに小学校の校長先生だったという、教員としてまさにサラブレッド。大学では民俗学を学び、その後も修士課程2年、博士課程3年と大好きな神話について研究を続けていた。「例えば、沖縄にある小さな島がどうやってできたかのか知っています?」との興味深い問いかけから、神話は昔の科学であり、自らの起源などを説明するための大事な話だったことなど、未知の世界へぐんぐん引き込むトーク力はまさに先生だ。「話すのが好きで、僕のくだらない話を大勢が聴いてくれる職業はあまりないから(笑)、先生という職業は向いているのかも」と曽我部さん。おそらく天職ですねと確信してしまうほど、いきなり心を掴まれた。

インタビューを受ける曽我部一行さん

テコンドーとの出会い

「いつかオリンピックに出たい」「強くなりたい」という思いを学生時代から抱いていた曽我部さんは、中学時代はバスケットボール、高校時代は水泳と陸上に取り組んでいたが、K-1などが流行っていた時代でもあり、いつか格闘技をやりたいとの思いが募る。ただ部活動に格闘技種目がなかったため、大学入学後にまずは空手道部で4年間。その間にオリンピックの正式種目となったテコンドー(2000年)を知り、「世界で一番強くなる」願望を叶えるのはこれだと思ったという。ただ、なかなか道場が見つからず、大学を卒業する頃に、ようやく本場韓国出身の師範との出会いがあった。大学もテコンドー学科出身でナショナルチームに所属したこともある師範に「いつもボコボコにされた」とか。予想以上に難しく、約3年はまったく勝てない日々が続いた。それでも練習を続けた結果、全日本学生選手権優勝、全日本選手権3位入賞を果たした。

テコンドーの大会での様子

成長を感じるのが楽しい!

現在はマスターズに軸足を移し、パンパシフィックマスターズで優勝(2014年)、アジアパシフィックマスターズ準優勝(2018年)、ヨーロピアンマスターズ準優勝(2019年)と、世界へ遠征しながら活躍している。ただ、これらはすべて、マスターズで世界一になるための通過点にすぎない。「自分では、全日本でメダルをとった時よりも、今のほうが確実にうまいと思う。体も今のほうが柔らかくなった」と感じていて、そういった自分の変化や成長が、世界一を目指し続ける曽我部さんが楽しみながらチャレンジし続ける原動力にもなっている。

小学校の体育は「生涯にわたって運動に親しむ気持ちを育てる」のが目標の一つだそうだ。テコンドーの試合には精神的な駆け引きが必要であり、そのために、物事をより深く考えるようになり、効率的な蹴り方や自分の体について、さまざまな角度から根拠を考え、日々取り組むことが楽しく続ける秘訣にもなっている。

インタビューを受ける曽我部一行さん

子どもたちに「世界一のオッサンになる!」と宣言

「世界で一番強くなる!」という夢を、曽我部さんは小学校でも公言している。
教師はよく子どもたちに対して将来の夢をもとうと促すが、「子どもたちに夢をもてというからには、大人になってもこうして挑戦している姿を見せることで、言葉に対しての説得力が増すんじゃないかと思うんですよね」と曽我部さんは考えている。
この日に着ていた「SOGABE」の文字入りの青いTシャツは、「先生、頑張ってください」と、卒業生と保護者がデザインしてくれたものだそうだ。今の学校でも遠征から帰ると、職員室のホワイトボードに「曽我部先生銀メダル獲得おめでとう!」と書いてあるなど、本気で夢を追いかけていると、周りも認め、応援したくなるものだ。メダルをクラスに持っていくと「触っていい?」と子どもたちも大喜びする。

過去の大会で獲得したメダルやトロフィー

今の子どもたちは、昔に比べると失敗を恐れる傾向がやや強いという。例えば卒業文集に、「将来の夢」をテーマに選ぶ子が減り、多くは修学旅行のような行事の思い出を書くという。アスリートの卒業文集といえば、サッカーの本田圭佑選手や、野球のイチロー選手の作文が有名だが、彼らは将来の夢について「なりたい」ではなく「なる」と書き、「いつまでに何をやり、いくら稼ぐか」まで具体的に書いていた。しかし、なかなかそのような文章を書く子どもたちは多くない。

「なりたいと思っていてもなれない人がいるんだから、なれないと思っていたら絶対になれないよ。だから、夢は自由に描けばいいんだよ」と自分自身がその姿を見せ続けながら、子どもたちに伝えている。そんな曽我部さんの影響受けて、テコンドーを始めた教え子もいるそうだ。

テコンドーを始めた教え子との写真

変化を恐れず人生を楽しもう!

小学校というのは決して休みやすい職場ではないが、弾丸スケジュールで時間を確保し、海外遠征する。一人で海外へ行くと、テコンドーという共通点からたくさんの友人ができ世界が広がるなど、試合とは別の魅力もあるという。日本と違い、大きなコンベンションホールにマットが敷かれたところで競技したり、LIVEが行われたり、バルもある。自分の試合を見てくれた他の選手が「君の試合を見たよ」「日本から来たグッドファイターじゃないか!」と言って、ビールをおごってくれたりする。ダンス音楽が流れたら思い思いに踊る。そんな世界を経験すると、日本人はもっと楽しんだらいいと思うそうだ。そして、勝つためには楽しむことが大事だということも実感する。「変化を恐れたら終了。何歳だからどうとかでなく、やりたいこと、興味あることをただやればいいと思う」。取材をしていて、曽我部さんが世界一になる日の表情が目に浮かんだ。

テコンドーの蹴り技を披露する曽我部さん

インタビュー・文/中野 佳代子
(10歳若がえり隊 編集長)

曽我部 一行さん プロフィール写真

曽我部 一行

<経歴>

1979年生まれ、東京都出身、三児の父。文学修士。成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻博士課程後期単位取得満期退学。元成城大学民俗学研究所研究員。現在は名古屋市の公立小学校で教諭として勤務。23歳の時にジャパンテコンドースクールでテコンドーを始め、就職と共に蹴道館へ移籍。全日本学生選手権優勝、全日本選手権3位、他優勝、入賞多数。
オーストラリア、マレーシア、イタリアと、各地でマスターズの大会に出場し、ネットで現地の協力者を見付け単独で挑戦している。ワールドマスターズ優勝を目標とし、国内でも大会に出場しながら世界一のオッサンを目指す。