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10歳若がえり隊隣のスーパーアスリート

水口 政人さん

人生も瞬発系!
マスターズ陸上で日本一
速いアスリート

水口 政人さん
MASATO MINAKUCHI

マスターズ陸上トップ選手の原点は野球一筋

40歳から100m走に挑戦し、4年目の2017年に初優勝(M40)。2019年のアジアマスターズ陸上では100m(M45)で優勝。さらに4×100mリレーで2走を務め、世界記録を更新しての優勝。マスターズ陸上界で、今もっとも速いと注目の水口さんは、元は野球少年で8歳からリトルリーグに入団。瞬発系の能力が高く、幼少期から足は速かった。打球も遠くに飛ばせたが、ゴロやフライをとるのが苦手など不器用な面もあり、補欠生活が長かった。

高校でようやく開花し、4番センターとして活躍。甲子園を目指し充実の3年間を送った。大学は国立を考えていたが、高校3年生の時、テレビで早慶戦を見て満員の神宮球場で活躍する選手たちに憧れ一転、慶応義塾大学への進路変更を決める。持前の勝負強さと集中力で見事合格したが、4年間レギュラーにはなれず悔しい思いをした。「おかげでうまくいかないことに対処する力や、共感力などを身につけることができたかもしれない」。しかし今でも夢を見る。それはまだ、4年間の野球生活が終わらない夢。最後のリーグ戦で試合に出るチャンスが残っていて、練習試合で打ちまくり、チャンスが回ってくるシーンが甦る。本気だったからこそ、やり直したいほど悔しかった。繰り返し溢れだす感情は「全力で戦い抜いた証」としか言いようがない。

大学野球神宮打席

人生を楽しむ力と前に進むモチベーション

大学卒業後は商社に入社し、4年目にメキシコへ語学留学。語学力向上のために、友達を作ろうと現地の野球チームに入った。メキシコはサッカーが盛んな国だ。そんな中、野球ができることはむしろ重宝がられ、あっという間に楽しい仲間が増えた。

留学後も引き続きメキシコに駐在し、20代の若さで現地子会社の代表取締役に就任。ビジネスを学び、30歳までに独立したいと思っていた水口さんには、経営者として小さな会社のマネジメントを実践できたことはまたとない経験だった。どうすれば人は動くのか、従業員のモチベーションを高めることに試行錯誤した。日本から本を取り寄せ、人の動かし方を学び続けるうちに、いつしかそれ自体を仕事にしたいと思うようになった。メキシコ人の部下たちは、毎日定時になると楽しそうに帰っていく。人生を楽しむ力がはるかに高く、日本に比べて幸せ度が高いと感じた。そんな彼らと過ごす中、困難にあっても「なんとかなるだろう」と考え、怯まず前進する力がより強くなっていった。

メキシコでの野球

自分の心に正直に。思い立ったらとことんやる!

帰国後、メキシコでの思いを胸に「採用・教育の仕事がしたい」と人事部に申し出たが、すぐには異動が叶わないとわかり、思い切って退社。人事・人材マネジメントを学ぶためにビジネススクールへ進学し、組織行動論やコーチングを学ぶ。思い立ったらとことんやる性格だ。周りに「無謀なことを・・」と言われても、自分の心が感じる憧れや欲求の通りに動いてみることにしている。他人の価値観でなく自分を生きるその姿勢が、チャンスを掴み、夢をかなえるコツなのかもしれない。卒業後は人事コンサルタントとしてコーチング技術を生かそうと就職したが「もっと人の心の勉強がしてみたい」との思いが抑えきれず再び退社。35歳から2年間、大学院で心理学を学んだ。家族は応援してくれ、どうしても学びたかった先生の下で期待どおりの学びができた。そして、大学教員として経験を積み、現在は社会人向けに部下指導やコーチング等の研修・セミナーを行っている。

インタビューを受ける水口政人さん

継続こそ結果を生む!ライフスタイルに合った練習方法

40歳から陸上をはじめたきっかけは、大学で同じ外野手だった同期と、100m走で対決しようという話になったことだ。勝敗はともかく、100%フルスロットルで走ることの気持ちよさにはまった。当時の自身のタイムは12秒6。そこから走る研究を開始。マスターズ陸上界のレジェンド、譜久里武さんの動画を見て「こんな化け物みたいに速い人がいるなんて!」と驚いた。1つ年上でタレントの武井壮さんは11秒台前半で駆け抜けていた。

一体どうすれば、仕事をしながらタイムが縮まるのか考えた末、自宅前の坂道をいかそうと思いついた。毎日3時半に起き、4時から30分、1日2本と決めて坂道をダッシュする。キッチンタイマーをセットして1本を12秒で走り、標識やブロックなど12秒の時点でどこにいるかを確認する。だんだん距離が長くなるのがおもしろく、気がつけば丸6年続いている。練習の肝は継続すること。仕事や生活リズム、そして自身の性格とマッチするやり方を見つけることがポイントだ。

ワールドマスターズゲームズ

幸せを最大化する生き方とは

メキシコ時代、将来のキャリアのためにと毎日ビジネス書を読みあさっていて、ふと思ったことがある。「俺はいったい、いつまで準備をし続けるのか?」と。幸せは“面積”で表せると水口さんは考える。x軸(横)を時間、Y軸(縦)を幸せ度とした場合、高めの幸せが続くのと、低めの幸せが続くのとでは、幸せの面積が大きく変わる。今の幸せ度を常に最大化することがポイントとなる。「10年後の“今”も、今の今も、どちらも価値は同じだと思うのです。それなのに、より不確定な“今”を優先して、確実な今をガマンしながら、いつかの準備のために生きるのはどうなのだろう?と思うわけです」。

数年前までは、全日本マスターズの100mで優勝したり、アジアマスターズのリレーで世界新記録を樹立することになるなど想像もしなかった。そのために準備をしたわけでもなかった。幸せを最大化するには、今、心に響くことをどんどんやること。水口さんの未来はこれからもっとおもしろい。

スペイン世界マスターズ

インタビュー・文/中野 佳代子
(10歳若がえり隊 編集長)

水口 政人さん プロフィール写真

水口 政人さん

<経歴>

1974年生まれ、愛媛県出身。慶応義塾大学卒業後、日商岩井(株)へ入社。スペイン語研修生を経てメキシコに駐在し、自動車関連の子会社で代表取締役に就任。帰国後は慶応ビジネススクールへ進学、組織行動論を研究しながらプロコーチCPCCの資格認定を受けるMBAを取得後(株)野村総合研究所にて経営者向けのエグゼクティブ・コーチング事業に従事。35歳で心理学の大学院へ入学し、東豊氏、坂本真佐哉氏に師事して臨床心理士・公認心理師となる。
現在は独立し、コーチング、カウンセリング、さらにビジネスパーソン向けセミナー講師として活動する。