2019/9/2(月)
自分の体と対話する
元プロトライアスリート・株式会社アスロニア代表
白戸 太朗さん
白戸 太朗
元プロトライアスリート・株式会社アスロニア代表
日本人として最初にトライアスロンワールドカップを転戦し、その後はアイアンマンへ転向、プロトライアスリートとして息の長い活動を続ける。また、アドベンチャーレースへも積極的に参加、世界中を転戦していた。
その後選手活動と共に、レースコーディネイトやスポーツチャンネルでのサイクルロードレース中継メインキャスターを務めるなど、スポーツを多角的に説くナビゲーターとして活躍。
2008年にはトライアスロン普及のために、「株式会社アスロニア」を設立。ショップ、スクール、大会運営などを手がけている。
幼少期の食卓から学んだこと
白戸太朗さんは京都出身で、お姉さんと弟2人の4人兄弟で育った。ご両親は共に教師で忙しかったが、お母さまは家族に手料理を作り、大皿で出していた。「油断しているとなくなるので、食事の時間はけっこう戦いの場でしたよ」と懐かしく笑う白戸さん。
タイからの留学生が一緒に住んでいた頃はタイ料理の日もあった。「ちゃんとした手料理で、味つけの濃くないものを食べていたから繊細な味もわかる。幅広いジャンルの料理を食べてきたからこそ、幅広いものを受け入れられる。思い通りの食事ができない海外遠征時でも、僕がどんな料理にでも対応できたのは、子どもの頃の経験がいきていたからだと思います」と、幼少期の食育の大切さを振り返る。
トライアスロンとは?
シドニーからオリンピック種目となったトライアスロンは、オリンピックディスタンスという基準のレースが、水泳1.5km、自転車40km、ランニングが10kmで行われる。もうひとつのアイアンマンレースは、水泳3.8km、自転車180km、ランニング42kmもある。普通の人だと約15時間、白戸さんたちプロでも約10時間かかり、カロリーを約6,000kcal消費する。そうすると、レース中に2000〜2500kcal、つまり成人男性の1日分のカロリーを走りながら摂る必要がある。
「美味しいおにぎりが食べたくても、心拍数150の中でおにぎりを食べるのは難しいですよ。やっぱり、スポーツ用のエナジージェルやエナジーバー、羊羹など食べやすいものを食べています。それでも2,000kcalを食べるのって、けっこう大変なんです。」さらに、高カロリーのものは甘く、食べ続けると口が飽きるため、白戸さんの場合は味噌をなめて味覚に変化をつける工夫をする。
10時間発汗し続けると、約12リットルの水分摂取も必要となる。「10リットル飲まないと脱水症状になってしまいますが、慣れない人は胃腸が受けつけないんです。でも水が飲めなくなったら、その人は走れなくなります。飲めない・食べられないは先がないんです。」胃腸が丈夫なことが、競技者にとって大事な資質。トライアスロンならではの話に、参加者は食事の手をとめ、前のめりになってきた。
海外遠征時の食生活の工夫
日本人として初めてワールドカップシリーズを転戦した白戸さんは、いつも一人で海外遠征していた。転戦中のホームステイ先で、前夜の食事がピザとコーラしかない時もあった。「前日の食事がちょっと変わったって、速くなったり遅くなったりしません。そんなことを気にして遅くなる奴は元から遅いんです。あるものを受け入れて、そこでどうやって頑張っていくかという話だと思います。」
食べ物は即効性よりも、体を作っていく長いスパンでの摂取を考えることこそ重要だと話す。またレースに必要な炭水化物や糖質を、今ある食べ物の中からどうやって摂取するかを考える。
「マクドナルドしかないこともあるので、それならバンズをいっぱい食べたほうがよいかなど考えます。栄養士さんにはバンズだけ食べて肉は捨てなさいなんて言われましたけど、そんなもったいないことはできないので肉も食べました。」
あるものでどうしたらベストなのか、どうやって工夫するか考える白戸さんには、決まった“勝負飯”はない。バンズしかなければバンズが勝負飯だ。
想定外を乗り越える考え方
競技が長時間におよび、着替えやエネルギー摂取もあるトライアスロンはトラブルが起きる可能性が非常に高い。あまり細かく考えていると何かトラブルが起こった時に嫌になるという。
「トラブルが起きた時にどう思えるかってすごく大事なんですよね。すべて思い通りにいくことが100%ありません。30年間トライアスロンをやっているとこの考え方が基本になり、私生活でも何とかなるんじゃない?と思え、「大丈夫じゃない」って言うのが口癖になり、みんなに「適当ね」ってよく言われます。」
この「大丈夫」という言葉は世界中にある。英語では「テイクイットイージー」、韓国語は「ケンチャナヨ」、スペイン語だと「アスタマニアナ」、スワヒリ語は「ハクナマタータ」、フランス語では「ケセラセラ」。どんな文化にも共通のメンタリティーがある。「なんとかなるさ」は世界の共通言語と言えるかもしれない。
トライアスロンで人生を豊かに
現在は、なかなか練習時間をとることが難しいものの、朝は短い時間でも走り、リフレッシュの時間としている。「ものすごくスカッとして1日が始まるんですよね。自分の中での楽しみとしています」
レースや練習時の時間の使い方、飲食のしかた、体の感じ方、物事の捉え方・・・白戸さんのお話からは、過酷なレースの苦しさではなく、人生の楽しみや視野の広がり、可能性を感じ、まさに「トライアスロンには人生を変える力」があることを感じた方が多かったのではなかろうか。白戸さんは今、アスロニアを設立し、自身がトライアスロンと出会ったことで人生が豊かになったように、一人でも多くの人がこのチャンスに出会ってほしいと願い活動している。
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